2006年度の診療報酬改定において新設された禁煙治療に対する保険給付(「ニコチン依存症管理料」)は、外来患者を対象としています。
保険給付の対象は以下の条件を満たす「ニコチン依存症」の患者です。すなわち、
の4つの条件に全て該当した患者です。
禁煙治療は、初回診察に加えて、禁煙開始2週間後、4週間後、8週間後、12週間後の計4回の再診で構成されており、その内容は以下の図に示すとおりです。
今回の保険適用では、ニコチンパッチやニコチンガムのニコチン製剤については保険給付の対象としていません。
1.初回診察
2.再診 喫煙開始日から2,4,8,12週間後(計4回)
保険適用の対象患者を抽出するために実施するニコチン依存症のスクリーニングテスト(TDS)は、WHOの「国際疾病分類第10版」(ICD-10)やアメリカ精神医学会の「精神疾患の分類と診断の手引き」の改訂第3版および第4版
(DSM-Ⅲ-R、DSM-Ⅳ)に準拠して、精神医学的な見地からニコチン依存症を診断することを目的として開発されたものです。
このテストは1998年度の厚生省の「喫煙と健康問題に関する実態調査」でも用いられています。このテストは、下記の10項目の質問で構成されています。「はい」を1点、「いいえ」を0点とし、合計得点を計算します。質問に該当しない場合は、0点と計算します。TDSスコア(0~10点)が5点以上をニコチン依存症と診断します。
このテストは日本人を対象に信頼性と妥当性の検討がなされており、WHOの統合国際診断面接(WHO-CIDI)を用いたICD-10の診断結果をgold standardとした場合のTDSの感度は95%、特異度は81%と報告されています。
ファーガストロームのニコチン依存度指数(FTND)は生理学的な側面からニコチン依存症の程度を簡易に評価するためのスクリーニングテストとして、国際的に広く用いられていますが、FTNDの旧版であるFTQとICD-10との相関はTDSに比べて低く、精神医学的な立場から薬物依存症としてのニコチン依存症をスクリーニングする場合はTDSを用いるのが望ましいと考えられます。
[参考文献]
Kawakami N, Takatsuka N, Inaba S, et al: Development of a screening questionnaire for tobacco/nicotine dependence according to ICD-10, DSM-Ⅲ-R and DSM-Ⅳ, Addictive Behaviors. 24: 155-166, 1999.
設問内容 | はい 1点 | いいえ 2点 |
---|---|---|
問1.自分が吸うつもりよりも、ずっと多くタバコを吸ってしまうことがありましたか。 | ||
問2.禁煙や本数を減らそうと試みて、できなかったことがありましたか。 | ||
問3.禁煙したり本数を減らそうとしたときに、タバコがほしくてほしくてたまらなくなることがありましたか。 | ||
問4.禁煙したり本数を減らしたときに、次のどれかがありましたか。(イライラ、神経質、落ちつかない、集中しにくい、ゆううつ、頭痛、眠気、胃のむかつき、脈が遅い、手のふるえ、食欲または体重増加) | ||
問5.問4でうかがった症状を消すために、またタバコを吸い始めることがありましたか。 | ||
問6.重い病気にかかったときに、タバコはよくないとわかっているのに吸うことがありましたか。 | ||
問7.タバコのために自分に健康問題が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか。 | ||
問8.タバコのために自分に精神的問題が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか。 | ||
問9.自分はタバコに依存していると感じることがありましたか。 | ||
問10.タバコが吸えないような仕事やつきあいを避けることが何度かありましたか。 |
注)上記の日本語の質問票は、
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科のホームページ(http://www.okayama-u.ac.jp/user/med/hyg/tds.htm)より引用。一部の表記については、開発者の了承を得て改変。
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